カラダの話

2025.01.14
カラダの話

インフルエンザ

医師Oです。

インフルエンザで2024年年末に体温40.5度を経験しました。高熱は3日続きましたが、その間は唸りながら寝てるだけでよかった。でも、その後にきた痰まじりのひどい咳にはこたえました。肺の奥の方で痰まじりの喘息のような咳が襲ってきます。胸膝位(うつ伏せで膝を抱えて丸くなるような格好)でお腹を抑えながら咳きこみます。腹筋と肋間筋が悲鳴を上げるような咳き込みが体力を削ぐ感じでした。食欲もなくて、何も食べたくないのが体力低下に拍車をかけました。体力には自信があったつもりの私が治癒後5日経ってもフラフラです。自分の経験をふまえインフルエンザについて簡単にまとめました。

インフルエンザの潜伏期間: 1〜3日

他人への感染期間: 発症前1日から発症後2〜3日

症状: 突然の発熱、咽頭痛、関節痛、全身倦怠感、咳

薬: 発症48時間以内に治療開始しないと効果が弱い

インフルエンザ治療薬まとめ

オセルタミビル(タミフル®、オセルタミビル®) 内服薬

全世界で使用される、最もエビデンスのある薬剤です。海外での成人及び小児におけるRCTでは罹病期間短縮、合併症防止が証明されています。オセルタミビルの内服により、嘔気、嘔吐が増加するといわれています。
今般話題の、タミフルによる「精神・神経症状」については、因果関係は明確ではないものの、医薬関係者に注意喚起を図る観点から、平成16年5月、添付文書の「重大な副作用」欄に「精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、観察を十分に行い、症状に応じて適切な処置を行うこと。」と追記されました。

インフルエンザ罹患時はタミフルの処方の有無を問わず、異常行動発現のおそれがあることから、自宅において療養を行う場合、(1)異常行動の発現のおそれがある、(2)少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することが適切とされています。しかし、インフルエンザ罹患のない、予防投与においてもタミフルの服用後に12歳の患者が2階から転落して骨折した例もあり、タミフル服用後の異常行動について、更に医療関係者の注意を喚起するよう、中外製薬、医療従事者に注意喚起がなされています。

ザナミビル(リレンザ®) 吸入薬

1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を使用して吸入します。48時間以内に治療を開始した場合には罹病期間の短縮、症状の軽快が証明されています。健康な小児では罹病期間の短縮を認めましたが、合併症防止の有効性は証明されていません。B型インフルエンザには、ザナミビルの効果が高いとする報告があります。重症例や肺炎や気管支喘息の合併例では、吸入の効果は限定的あるいは気管支攣縮(れんしゅく)を起こす可能性が考えられるため避けるべきとされています。現在まで耐性の報告はほとんど見られません。

ペラミビル(ラピアクタ®) 静注薬

唯一の静注薬であるので、経口摂取が困難な患者や入院症例では有用と思われます。1回の点滴で治療が終了しますが、症状によっては反復投与も可能です。適応を十分考慮したうえで、静注治療が適用と医師が判断した場合に行います。

ラニナミビル(イナビル®) 吸入薬

有効性は概ね他の抗インフルエンザ薬と変わりありませんが、小児ではラニナミビル治療群の罹病期間はオセルタミビル治療群に比して、60時間以上短縮して有効性が著明に高い結果が得られました。ラニナミビルは、海外での臨床試験において有意な有効性が得られなかったことにより海外での発売が中止となり、使用できるのは日本のみとなっています。わが国でのサーベイランスでは、臨床的有効性が継続していることが報告されています。
確実に吸入ができれば、1回の治療で完結できます。またザナミビル同様、耐性は報告されていません。吸入薬のため重症例や肺炎、気管支喘息合併例では使用すべきではないと思われます。


バロキサビル(ゾフルーザ®) 内服薬

2018年2月に発売された抗インフルエンザ薬では新しい薬剤となります。他の薬剤と作用機序が違うエンドヌクレアーゼ阻害薬という分類で、1回の服用で治療が完結する簡便な治療薬です。有効性はタミフルと同等という位置づけになります。しかしながら発売当初より処方量が多く、2018年には薬剤耐性化の問題が発生しました。インフルエンザA型H3N2株の9.7%がゾフルーザ耐性であるとの報告があります。特に12歳未満の小児での耐性率が高いと言われるなど話題になりました。

以上、治療薬がたくさんあるので悩ましいところですが、いずれも有効性が確認されています。医師とよく相談して治療をうけてください。いずれにせよ、発熱、食欲低下などで脱水が一番問題となるところです。飲みたくなくても少しずつ飲水する、ゼリー飲料や経口補水液などをうまく利用する、嘔吐、下痢がひどい時は点滴をうけるなど賢く対応したいところです。たかがインフルエンザされどインフルエンザ。重症化すると肺炎や脳症などの合併症もあります。正しく恐れて上手に対応したいものです。何はともあれ、かからないこと、が一番ですね。